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2006年3月 2日 (木)

『シリウスの道』藤原伊織

4163240209シリウスの道
藤原 伊織 (著)
文藝春秋 (2005/06/10)

-----[ あらすじ ]-----
大手広告代理店・東邦広告に勤める営業部副部長・辰村祐介は予算18億円のビッグプロジェクト、しかもワケあり、の争奪合戦にたずさわることになる。辰村は子供の頃は大阪で育ち、明子、勝哉という幼馴染がいた。3人には人に言えない秘密があったものの、それぞれ別々の人生を歩むこととなり、25年間合わずにいたのだが、明子のもとに秘密に関する脅迫状が届き…。
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2006年度版 このミステリーがすごい! 第6位

ですが、ミステリ色は限りなく薄い。
ミステリというよりは、広告代理店業界を舞台とした企業小説の側面が強い。

大阪時代の幼馴染3人にしか知りえない25年前の出来事に関する脅迫状の送り主は誰か?がミステリ的部分なのだが、これはもう、オマケとしか思えない。甘酸っぱくて切ない郷愁をかもしだしてはいたが。

それよりも、ビッグプロジェクトを受注すべくメンバーを集め、戦略を練り、クライアントに対するプレゼンテーションに全力を傾ける。わき起こるさまざなな障害を乗り越えて競合する他社に勝つことができるのか?!がメインのストーリーだろう。

主人公の辰村がとにかくハードホイルドしいてる。一介の営業部副部長にすぎないにもかかわらず、社長に対しても己のポリシーを曲げようとはしない。どんな圧力にも屈しない。人を見る目もあるし、腹もすわっている。しかも、社内でも有名な美人で有能な女性部長に恋愛感情をもたれている。もちろん自分自身は仕事もでき、周囲からの信頼も厚い。これって、多分男性サラリーマンの憧れだよね。あまりに出来すぎた人物なのでリアリティが薄く、劇画っぽいけれども。でも、自分が出来ないことをやってくれる主人公に爽快感を感じるサラリーマンは多いのではないだろうか。

個性的で魅力的な登場人物に、いかにもな悪役、次々と発生する困難な事態、など、リーダビリティは高いく、広告業界をあつかった企業小説として楽しめた。が、主人公をはじめ、美人部長、有能な部下、などちょっと現実離れした感があって、一歩ひいてしまい感情移入できなかった、というのが正直なところ。それでも、一気読みでした。

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2006年3月 1日 (水)

『交換殺人には向かない夜』東川篤哉

4334076203交換殺人には向かない夜
東川 篤哉 (著)
光文社 (2005/09/26)

-----[ あらすじ ]-----
私立探偵の鵜飼杜夫は画家・善通寺春彦の妻・咲子から夫の浮気調査を依頼される。鵜飼と探偵事務所の大家・朱美は使用人になりすまして山奥にある画家の屋敷へ潜入し、妻が留守にする夜の夫の行動を見張ることに。一方、探偵の弟子・戸村流平は十乗寺さくらに頼まれ、年代物の八ミリカメラの購入につき合った後、さくらの友人・水樹彩子の山荘にそのカメラを届けに出かける。志木刑事らは商店街で発生した女性の刺殺事件の捜査を行っていた。その夜は雪が降っていて山間部はかなりの積雪量になり…。
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架空の街・烏賊川市(いかがわし)を舞台にしたシリーズの4作目。

まず驚いたのが、笑いのセンスが格段によくなっていること。ドタバタであったり、寒かったりする部分もあるとこはあるが、これはもう許容範囲。というか、徐々にツボにはまってきたかも。それよりも、お笑いさえも読者の目くらましにしてしまっているのには、非常に感心した。

善通寺家の屋敷の鵜飼と朱美、彩子の山荘の流平とさくら、鶴見通りで発生した殺人事件を追う刑事たち。それぞれ別の場所で起きた出来事が交互に書かれている。この3つの話がどう繋がるのかは、もう驚いたとしかいいようがない。著者のたくらみに、すっかり引っかかってしまった。うわっ、やられたー!久しぶりに騙される快感を味わった。

正統派本格ミステリとお笑いを両立させた手腕はお見事!
楽しめました。

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