『シリウスの道』藤原伊織
『シリウスの道
』
藤原 伊織 (著)
文藝春秋 (2005/06/10)
-----[ あらすじ ]-----
大手広告代理店・東邦広告に勤める営業部副部長・辰村祐介は予算18億円のビッグプロジェクト、しかもワケあり、の争奪合戦にたずさわることになる。辰村は子供の頃は大阪で育ち、明子、勝哉という幼馴染がいた。3人には人に言えない秘密があったものの、それぞれ別々の人生を歩むこととなり、25年間合わずにいたのだが、明子のもとに秘密に関する脅迫状が届き…。
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2006年度版 このミステリーがすごい! 第6位
ですが、ミステリ色は限りなく薄い。
ミステリというよりは、広告代理店業界を舞台とした企業小説の側面が強い。
大阪時代の幼馴染3人にしか知りえない25年前の出来事に関する脅迫状の送り主は誰か?がミステリ的部分なのだが、これはもう、オマケとしか思えない。甘酸っぱくて切ない郷愁をかもしだしてはいたが。
それよりも、ビッグプロジェクトを受注すべくメンバーを集め、戦略を練り、クライアントに対するプレゼンテーションに全力を傾ける。わき起こるさまざなな障害を乗り越えて競合する他社に勝つことができるのか?!がメインのストーリーだろう。
主人公の辰村がとにかくハードホイルドしいてる。一介の営業部副部長にすぎないにもかかわらず、社長に対しても己のポリシーを曲げようとはしない。どんな圧力にも屈しない。人を見る目もあるし、腹もすわっている。しかも、社内でも有名な美人で有能な女性部長に恋愛感情をもたれている。もちろん自分自身は仕事もでき、周囲からの信頼も厚い。これって、多分男性サラリーマンの憧れだよね。あまりに出来すぎた人物なのでリアリティが薄く、劇画っぽいけれども。でも、自分が出来ないことをやってくれる主人公に爽快感を感じるサラリーマンは多いのではないだろうか。
個性的で魅力的な登場人物に、いかにもな悪役、次々と発生する困難な事態、など、リーダビリティは高いく、広告業界をあつかった企業小説として楽しめた。が、主人公をはじめ、美人部長、有能な部下、などちょっと現実離れした感があって、一歩ひいてしまい感情移入できなかった、というのが正直なところ。それでも、一気読みでした。
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