2007年2月16日 (金)

「独白するユニバーサル横メルカトル」平山夢明

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独白するユニバーサル横メルカトル
平山 夢明 (著)

光文社 (2006/8/22)

ごめんなさい!
私には無理でした。
まだ全然途中ですが、ギブアップさせていただきます…。

こういうテイストを好まれる方も多々いらっしゃると思いますし、それを否定するつもりは全くありませんが、私はダメでした。
もうね、なんで自分はこんなに気分が悪い思いをしながら読んでるんだろう…と、自問しましたよ。

内容がつまらないとか、そういうのとは別次元なんですね。

”生理的嫌悪感”

この一言につきます。

この嫌悪感を乗り越えた先には何かがあるのかもしれませんが、残念ながら、そこまでたどり着けませんでした。
ホント残念なんですけど、ダメなものはダメなんです。

それにしても、ここまで悪趣味な?いっちゃってる?世界を構築できるのは凄いことだなぁ、と思いました。

せめて表題作「独白するユニバーサル横メルカトル」だけは読んでおこうと、意を決して挑んだのですが、これはグロさもなく、なかなか面白かったです。
語り手をコレにした発想に拍手。

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2007年1月29日 (月)

「女ともだち」真梨幸子

4062134055女ともだち
真梨 幸子(著)
講談社 (2006/6/23)

-----[あらすじ]-----
同じタワーマンションの別々の部屋で同時期に見つかった2人の女性の死体。2人とも独身のキャリアウーマンだった。フリーライターの楢本野江が事件の真相を探るうち、被害者の女性たちの闇の部分が見えてくる…。
--------------------

主人公の野江をはじめとして、主な登場人物は、みな40歳前後の女性。
それぞれが、将来への不安やら、家族の問題やら、何かしら悩みをかかえているわけですが、みんながみんな非常に極端な人たちなのだ。
悩みの部分については分からなくも無いが、だからって、そんな行動に出るかねぇ?と。
非常識な(というか異常な?)行動をとってしまう心の部分の描写が薄くて、説得力がまるで無いんですよね。
なので、伝わってくるものが全く無くかったです。共感するでもなく、嫌悪感を抱くでもなく…。
ただ記号を並べただけ、という感じがしました。

ミステリとしても、どこかで見たような?というオチ。
ミステリというよりは、ホラーっぽかったです。

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2006年11月22日 (水)

『群青の夜の羽毛布』山本文緒


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群青の夜の羽毛布
山本 文緒(著)
文藝春秋 (2006/05) / 文庫

-----[ あらすじ ]-----
大学生の鉄男は、急な坂道の上にある家で暮らす不思議な年上の女性・さとると恋愛関係になる。病弱なさとるは、大学を中退し、家事手伝いをしていた。鉄男は、繊細で不安定なさとるに惹かれつつも、異常に母親に怯え家に縛られる彼女の姿に疑問を持ち…。
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息苦しくなるような話なのだけど、グイッと引きずり込まれた。
張りつめた緊迫感にキューッとなり、薄ら寒い怖さに凍りつく。

主人公さとるの家族に隠された秘密がちらちらと見え隠れし、ミステリ的要素も。

悪霊や未知の病原菌が出てくる下手なホラー小説より、よっぽど怖かった。
だって、リアルなんだもん。
主人公のさとるや、その母親のような人って、ここまで極端ではないにしろ、現実に居るもんなぁ。
なので、こんな異様な家族だって空絵事とは思えない。
実際、現実にニュースになっている、壊れた家族、壊れた親による事件が頭をよぎる。

恋愛小説としても読めるけど、私には家族・親子の話としての方が印象に残った。

母親の異常なまでの支配欲は、劣等感の裏返しなのか。
それにしても、この母親からは家族に対する愛情がみじんも感じられない。
娘を追い詰め、家族を崩壊し、一体どうしたかったんだろう…。

強権的な母親。
母親に支配されピクピクしつつも、そこから抜け出せず精神的に追い込まれて行く娘。
なのに、この親子はよく似ている部分があり…。
あー怖い。

改めて、親子の関係や家族について考えさせられる小説だった。

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2006年10月10日 (火)

『名もなき毒』宮部みゆき

4344012143名もなき毒
宮部 みゆき (著)
幻冬舎 (2006/08)

-----[ あらすじ ]-----
社内報の編集をしている杉村三郎は、実は今多コンツェルン会長の娘の婿であった。女性アルバイトの身元調査のために私立探偵のもとを訪れた杉村は、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くした女子高生と出会い…。
-------------------

なんとも怖い話であった。

自分の身近にも毒が潜んでいて、ちょっとしたきっかけで我が身に災いが降りかかっているかもしれない…というリアルな怖さがあった。

連続無差別毒殺事件で使われた青酸カリという毒、土壌汚染やシックハウス症候群の原因となる化学物質という毒、そして人の毒。
どれも種類は違うけれど、ひそかに身の回りに存在している毒のエピソードを綿密に絡み合わせ、社会派的側面を持ちながらも決して堅苦しくならず、するすると読ませる手腕は、さすが。
シリアスでやりきれない話にもかかわらず過度に重苦しくならず、心にズドンと残るものがありつつもやり切れない気持ちにはならない。
このあたりのさじ加減も絶妙だ。

宮部作品の時代物やファンタジーも嫌いではないけれど、何か物足りなさを感じていたのだが、本書を読んで、私は宮部作品が好きだ、と再認識。
このシリーズはまだ続きそうな感じの終わり方だったので、早くも次回作が楽しみ。

毒とは別の部分で印象に残ったのが、コンビニ店員の青年と杉村の妻との経済的違いからくる環境の違い。
経済格差とはこういうものなのか、と。
安全もサービスも有料な時代とはいえ、なんだかなぁ~。
日本は今以上の経済格差社会に向かっていると言われているけど、そうなると毒を吐き出す人も増えそう…などなど、私に社会問題を考えさせてしまうあたり、やっぱり宮部みゆきはすごい。

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2006年10月 6日 (金)

『顔のない敵』石持浅海

4334076394顔のない敵
石持 浅海 (著)
光文社 (2006/8/22)

表題作を含め、「対人地雷」をテーマにしたミステリー6編と、処女作短編を収録。

---[収録作品]---
・地雷原突破
・利口な地雷
・顔のない敵
・トラバサミ
・銃声でなく、音楽を
・未来へ踏み出す足
・暗い箱の中で
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石持作品については、登場人物がキモイとか、会話がサムイとか、動機がありえないとか、散々なことを言っているにもかかわらず、新刊が出ると読まずにはいられないのは、実は私好みだってことなんでしょうかね。
確かに、いつも、ちょっと他の人は思いつかないようなユニークなことを考えてくれるので、今度は何だろう、と楽しみにしている面はあるかも。

本書のテーマは「対人地雷」。
登場人物が微妙にリンクしているだけで、それぞれの作品は違った趣向になっている。
地雷というテーマで、これだけさまざまな設定を考えたのは凄いと思う。

対人地雷除去作業の困難さ、大量の地雷が埋められているカンボジアの問題など、ひしひしと伝わってくるものがあった。
発生した事件と地雷の問題とが密接に関係しており、事件の謎を解くことで、ますます地雷に関する問題が浮かび上がってくる。
これはもう、お見事!と言うしかない。

だた、どうしても受け入れ難い部分があり…。
身内をかばい過ぎというか、大善のために小悪には目をつぶる、みたいな姿勢はどうなんだろう、と。
この種の気持ち悪さはほかの石持作品を読んだときに感じたもので、これがあるから「石持作品のファンだ」と言い切れずにいるのだ。

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2006年9月18日 (月)

『ストロベリーナイト』誉田哲也

4334924867ストロベリーナイト
誉田 哲也(著)
光文社 (2006/2/22)

-----[ あらすじ ]-----
公園の植え込みで、青いビニールシートにくるまれた惨殺死体が発見される。
警視庁捜査一課殺人犯捜査係に所属する女性警部補・姫川玲子(29歳)が、謎の多い惨殺事件の真相に迫る。
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話が進むほどに、謎が謎を呼ぶ展開でページを繰る手が止まらなかった。
脇を固める登場人物もひとくせある人々がそろっていて、話を盛り上げる。

主人公は、ノンキャリアながら27歳で警部補に昇進し、警察庁の捜査一課殺人犯捜査第十係の主任である女性警部補・姫川玲子。
持ち前の勘のよさで事件に迫る姫川だが、肩書きを盾にしていたり、ひらめきに頼って突っ走ったりで、警察内にも反感を持つ者がいる。
その姫川が、自分のトラウマと対峙することで刑事としても人間的ににも成長していく様子はこの物語の重要部分になっているのだと思うが、これがどこかで見たようなありきたりな話になっているのが残念。
しかも、姫川にしても殺人犯にしても、心の傷をこの手のトラウマが原因だというのは、もういい加減飽き飽きだよ。何かもっと違うことを考えられないものか。

ミステリ的には、とにかく姫川のひらめきが凄すぎ。普通、ありえないでしょ!
でも、そのおかげでテンポよくストーリーが展開してるんだろうなー。
事件の犯人については、ひねりが足りない感じで、ミステリを読みなれている人は容易に真相にたどり着いてしまいそう。

充分に面白く一気に読んだのではあるが、読了後は若干の物足りなさを感じた。
次回作にさらなる飛躍を期待。

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2006年9月14日 (木)

『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件 』西尾維新

4087804399DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件
西尾 維新 (著)
集英社 (2006/8/1)

-----[ あらすじ ]-----
大人気漫画「DEATH NOTE(デス ノート)」のノベライズ。
Lからの依頼を受け、FBI捜査官の南空ナオミは「ロサンゼルスBB連続殺人事件」の捜査を行うことになるのだが…。
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DEATH NOTE」を、あの西尾維新が小説化したというので、とても楽しみにしていたのだが、どうやら期待しすぎていたようだ。

デスノートというユニークな素材を西尾維新がどのように料理するのかワクワクしていたのに、デスノートがストーリーにからむことはなかったよ…。

主人公はFBI捜査官の南空ナオミ。Lの依頼を受け、不可解な連続殺人事件の捜査を行うのだが、キラ事件の起こる約2年前のロサンゼルスが舞台なので、デスノートどころか、ライトも死神も登場しない。
どちらかというとL派の私だけれど、これには拍子抜け。
世界観も雰囲気も漫画版と共通点を感じる部分はあまりなかったので、全く別物と思って読んだほうが楽しめたんだろうなー。
犯行の動機や、なぜ密室にしたのかなど、面白いと思う部分も確かにあったので、ノベライズと思わずに読んだとしたら違った感想になったかも。
でも、漫画版を知らないと全く意味が分からない部分もあるしなぁ…。

漫画版「DEATH NOTE」に特徴的な理屈っぽくて詳細な推理は健在なのだが、これを延々と小説でやられると読むのが辛かったし、小説のテンポを悪くしているようにも思った。

ノベライゼーションって難しいのね。というのが一番の感想かも。

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2006年9月10日 (日)

『カーの復讐』二階堂黎人

406270577xカーの復讐
二階堂 黎人 (著)
喜国 雅彦 (絵)
講談社ミステリーランド (2005/11)

-----[ あらすじ ]-----
怪盗ルパン VS 古代エジプトの呪い。
フランスの新聞<<エコー・ド・フランス>>編集長のまたの姿は、怪盗アルセーヌ・ルパンなのであった。ルパンは、フランスに運ばれてきた古代エジプトの秘法<<ホルスの眼>>を狙っていた。ルパンの隠れ家へ、部下のマルコがベロニック婆さんからの手紙を持って現れる。エジプトの秘法を発掘したボーバン博士の家族に殺人鬼の魔手が迫っているというのだ…。
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あらすじなどの何の前提知識もなく読み始めたので、驚いた。
これってルパンの話だったのね!
題名にある"カー"から勝手にディクスン・カーを連想していたのだけど、全然違ったようだ…。
この作品では、ルパンが探偵役となり、密室殺人やミイラ男の謎に挑むのです。

小学生のころ、学校の図書室にあったルパンシリーズに夢中になった私なので、懐かしさを感じながら読んだ。
次々と起こるおどろおどろしい奇怪な出来事が、ちょっと古めかしい文体とあいまって、なかなかいい雰囲気をかもし出しているではないか。
だた、これが今の子供達にアピールするかといえば…どうなんだろう、とも思う。
やはり、古さを感じてしまうのではないか。
どちらかと言うと、私のように子供の頃にルパンを読んでいた大人の方が楽しめそうではある。
内容的には、何の心配もなく子供に読ませられるのだけど。

本書を読んで、懐かしのルパンシリーズをまた読んでみたくなった。
今度、図書館で借りてみようかな。
図書館にあることは知ってるのですよ。

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2006年9月 7日 (木)

『無痛』久坂部羊

4344011589無痛
久坂部 羊 (著)
幻冬舎 (2006/04)

-----[ あらすじ ]-----
医師・為頼は人の外見を見るだけで病気の症状と犯罪の兆候がわかる能力を持っている。為頼は、財布を拾ってもらったのをきっかけに臨床心理士の菜見子と知り合い、相談を受ける。菜見子が勤めている精神障害児童の施設に入所しているサトミという少女が、教師一家殺害事件は自分がやった、と告白したというのだ…。
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とにかく気分が悪くなる場面が多かった。

物語としては面白かったのだが、過剰にサディステックで、しかも描写が超リアル。
残虐なシーンやストーカー男の異常な行動をここまで詳細に書き込む必要があるのか、疑問を感じる。
生理的な嫌悪感を覚え、読むのが苦痛になることが何度かあった。
このような表現を好む人もいるのかな…。

主人公は医師の為頼。
外見を見るだけでその人の病状が分かってしまうという特殊能力を持っている、というユニークな設定。
その能力ゆえに、医療に対しては独自の考えを持っている。
全てに共感することは無いけれど、そうかもしれないな…と思う部分もあり、なかなか興味深かった。

作中には特定の病気や障害を持つ人が登場する。
多分に脚色されているのだとは思うが、だからこそ実際にその病気にかかっている人やその家族が読むと不愉快な気持ちになるのではないか。
物語のキーとなる人物については、あまりにデフォルメされていて、まるでX-メンなので、もうここまでくると現実感ゼロなんだけれども、でも、当事者はいい気持ちはしないと思う。

気分が悪くなると言いながらも、後半に向けスリリングな展開で一気に読ませるものはあった。
が、ミステリ的には、強引に収束させた感じで、やや拍子抜け。
どちらかというと、ホラーっぽかったな。

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2006年9月 4日 (月)

『探偵伯爵と僕』森博嗣

4062705702探偵伯爵と僕
森 博嗣 (著)
山田 章博 (絵)
講談社ミステリーランド (2004/4/28)

-----[ あらすじ ]-----
夏休み前の7月、新太は公園で夏にもかかわらず真っ黒なスーツを着たアールと名乗る探偵伯爵と知り合いになった。お祭りの準備をしていると、白い服の女性に伯爵を見つけたら電話をかけてほしいと頼まれる。その女性は伯爵の秘書でチャフラスカというらしい。盆踊りの準備の夜から友だちのハリィが行方不明に。その数日後、新太と会う約束をしていたガマも行方不明になり…。
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なんとも理屈っぽいし、説教くささを感じる部分もある。
罪と罰についてのくだりなど、大学時代の刑法や刑事政策の授業を思い出してしまったよ。
だが、森さんが子供達に伝えたいこと考えて欲しいことはよく分かったように思う。
子供には難しそうな問題にも真正面から向き合う姿勢は好ましく感じた。

夏休みに巻き込まれた冒険小説として楽しく読むこともできるけど、読み進むにつれ私にはとてもリアルな話に思われた。
伯爵とチャフラスカさんの素性が分かるにつれ、物語はどんどん現実味を帯びてくるのだ。
と同時に、あーあれはこれの伏線だったのね、と納得する。
これは子供には分からないだろうなぁ~、というのはあるけれど。

S&Mシリーズの途中で挫折してから森作品はスルーしてきたのだが、また読んでみようかなと思った。

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